「ヴェルサイユ宮殿」と聞くと咄嗟に浮かぶのは、少女漫画の傑作、池田理代子の『ベルサイユのばら』が脳裏に浮かびますが、今の若い人は知らないかもしれません。ヴェルサイユ宮殿はバロック建築の代表作で、豪華絢爛(ごうかけんらん)な建物です。
1.ヴェルサイユ宮殿とは?
都市ヴェルサイユはかつてフランスの首都でした。ヴェルサイユ宮殿はルイ14世が1682年に建てた建築物です。王が絶対的な権力を行使する政治、絶対王政を示すための建てられた宮殿で、ただ豪奢(ごうしゃ)というだけではなく、様々なルールやマナーがありました。
人員で言うと宮殿建設の25,000人に対し、噴水庭園には36,000人が投入されています。どちらも大変な人数で、ルイ14世はこの宮殿を建てることで力を見せつけ、貴族を従わせ、民衆の心を掴みました。
世界遺産に登録されている宮殿です。ルイ14世はさまざまな侵略戦争により領土を拡大させ、王権神授説・ガリカニスムを唱えアンシャンレジームを確立させました。歴代君主の中で最も絶大な権力を握り、王朝の最盛期を築いたことから「太陽王」と呼ばれていましたが、晩年には国は財政難に陥り、ルイ14世はルイ15世に「自分のように戦争を起こしてはならない」と遺言を残したそう。ルイ15世はそれを聞かず戦争を引き起こし続けたため財政はさらに悪化。ついにルイ16世の代でフランス革命が勃発し、アンシャンレジーム崩壊となりました。
2.ヴェルサイユ宮殿の魅力ポイント
1.鏡の間
鏡の間は儀式や海外の賓客をもてなすために使われました。1871年にドイツ皇帝ヴィルヘルム1世の即位式が行われ、また第一次世界大戦後の対ドイツとの講和条約であるヴェルサイユ条約が調印された場所でもあります。きらびやかな宮殿の中でも、特に華やかなところです。いくつものシャンデリアと燭台。フランス王の栄華を表わす天井画。そして銅像。思わず圧倒されます。
ヴェルサイユ宮殿の中でも最も有名な回廊です。全ての窓の正面にアーケードが配されており、そのアーケードにはなんと350枚以上もの鏡が施されています。2007年に鏡や天井絵の修復作業が行われ、約300年前の優美な姿を取り戻しました。王族の結婚式や舞踏会の会場としても使用されたそう。いくら華やかとは言え、回廊が儀式や外交の場として使用されるのは違和感がありますが、これも全てフランス君主の威光を示すためだと言われています。
2.大トリアノン宮殿(ル・グラン・トリアノン)
大トリアノン宮殿(ル・グラン・トリアノン)は、ヴェルサイユ宮殿の庭園にある離宮の一つです。とてもエレガントな建物ですが、ここもまた歴史上の重要な締結が結ばれたところです。第一次世界大戦後、戦勝国によるハンガリー分割を行うトリアノン条約の調印が行われました。
1670年、ルイ14世が愛妾・モンテスパン侯爵夫人と密会するための場として建築したそうです。ルイ14世は王妃(マリー・テレーズ)を愛してはいなかったようで、多くの愛妾を囲っていたそうです。モンテスパン侯爵夫人はもともと名門貴族の出身で王妃の侍女でしたが、誰もが目を惹くほどの美人でしたが、たいへん嫉妬深くヒステリックだったと言われています。この性格が災いし、ついには黒ミサにも手を染め、大きな事件となりました。
3.小トリノアン宮殿(プチ・トリノアン)
プチ・トリアノンの背後に広がる一帯はル・アモーと呼ばれています。マリー・アントワネットは庭をイギリス式にし、そこに農村に見立てた小集落を作らせました。日本語では「王妃の村里」と訳されています。アントワネットはここで田園生活風の暮らしを楽しんだと言われています。
小トリアノン宮殿はルイ16世が王妃であるマリー・アントワネットに送ったものです。歴代の君主・王妃たちとの関係性とは異なり、この2人はたいへん中がよく、ルイ16世は生涯のうちに一人も愛妾を持つことはなく、マリー・アントワネットだけを愛していたと言われています。この宮殿は、マリー・アントワネットにとって息が詰まる王宮から逃れるための隠れ家でした。フランス革命により処刑されたあと、ここで彼女の亡霊を見たという証言があったそうです。
4.庭園
ルイ十四世にとって、庭園は宮殿と同じぐらい大切なものでした。そして庭園を作成するときには、宮殿を作成するとき以上の労力が必要でした。ヴェルサイユには近くに水を引く高地がないからです。そのため装置や水道橋を用いて、10km離れたセーヌ川の水を使用することに成功しました。水のない土地で、水をふんだんに使う庭園を作り上げたルイ十四世は、貴族や民衆など人ばかりではない、自然をも従わせる力を誇示したのです。
この地にはもともと森林・牧草地・沼地しかなかったそう。そのため、花壇やオレンジ園、池を作るのには大量の土を要したそうで、フランス全土から手押し車で運ばれ、数千人も動員したと言われています。時には一個連隊が丸々借り出さされてたそうですよ。このエピソードからもルイ14世がどれほどこの庭園を作るために力を入れていたか、またどれだけの威光を持っていたかが伺えます。完成まで40年もの歳月を要しました。
3.実際に訪れた方の声
JALパックツアーの最初の訪問地、朝一で行きました。9時前に到着したので、観光バスもまばらでしかもツアーの為、すぐに入場出来ました。個人で行かれる方はガイド付きのオプショナルツアーでの訪問をお勧めします。 個人で行くと、入場に2〜3時間は当たり前、宮殿の中やお庭など、ガイドがあるのと無いのでは、感動の大きさが違うと思います。 贅沢を極めたフランス王朝も、王妃…
天井や壁、あらゆる空間を埋め尽くす絢爛豪華な装飾、マリー・アントワネットや歴代王ゆかりのお部屋、鏡の間など、印象に残る場所がたくさんあります。広大なお庭にはBGMが流れており、当時をしのびながらゆっくり過ごせます。
4.各種サービス
ヴェルサイユ宮殿は、800ヘクタール内で様々なサービスを行っています。まずはヴェルサイユの領地のインタラクティブマップをご覧ください。歩行が不自由な方には有料の電気自動車が便利です。南テラスから出発して、5ヶ所を周遊します。違うコースをたどるミニトレインもあります。その他レンタサイクル、貸しボート、ガイド付きセグウェイがあります。
さらに、ベルサイユ宮殿内の一部の建物が、フランスの有名ホテルグループであるロブ・ホテル・コレクションとフランスの有名シェフであるアラン・デュカス氏の会社の合同事業に貸し出されることが決定し、なんと2018年から宿泊が可能になるのだそう。客室は全20室を予定されています。ルイ14世・15世・16世とその王妃たちが過ごした場所で朝を迎えられるなんて、贅の極みですよね。これから楽しみです。
5.合わせて読みたい参考ページ
- トリノアンの幽霊 ウィキペディア(マリー・アントワネットの幽霊目撃談です)
- NHK世界遺産 ベルサイユ宮殿と庭園
- 小説『フランス革命』佐藤賢一
6.地図と基本情報
■ 基本情報
- ・名称:ベルサイユの宮殿と庭園
- ・住所:Place d’Armes, 78000 Versailles, フランス
- ・アクセス:パリからは近郊鉄道RER-C線でVersailles-Rive-Gauche(ベルサイユ・リヴ・ゴーシュ)駅下車が一般的。あるいは国鉄SNCFを使ってVersailles Chantiers(ベルサイユ・シャンティエ)駅やVersailles-Rive Droite(ベルサイユ・リヴ・ドロワ)駅で降りてもよい。
- ・開館時間:ポイント及びシーズンによって異なります。
- ・閉館日:ヴェルサイユ領地は、1月1日、5月1日、および12月25日は閉園となります。 他の祝祭日は開園となります。但し、休館日の月曜に当たった場合を除きます。
- ・電話番号:01 30 83 78 00
- ・料金:領地のすべての場所の見学が可能料金18ユーロの優待パスポートがあり。
- ・公式サイトURL:http://jp.chateauversailles.fr/homepage
というわけで「ヴェルサイユ宮殿」の紹介でした。日本人が「西洋のお城」と聞いて反射的に思い浮かべるのは、この宮殿のようなゴージャスこのうえないお城なのではないでしょうか。実際にドイツやスウェーデンなど、他国の宮殿建設に多くの影響を与えたお城です。
提供:トリップアドバイザー