列島騒然!「かつ丼」戦国時代
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世は「かつ丼戦国時代」である 。かつ丼が生まれたのは約100年前。以来近年まで、〝卵とじ幕府 〞 の地位は安泰かに見えていた 。だが実は反旗を翻さんという、かつ丼豪族は各国に息を潜めていた。 1,天下(かつ)統一! かつ丼(卵とじ)【東京ほか】
とじてこそ正義!
「卵とじかつ丼」の勢力は全国津々浦々まで及ぶ。まさしく世にあまたある”どんぶり名山”の最高峰。目にも鮮やかな頂上の緑は三つ葉かグリーンピースか。枕草子調なら「丼はかつ丼、 やうやう黄色くなりゆく卵、少しかかりて」と綴る感じか!分類:とじ
特徴:割り下で煮たかつを卵とじ
チャームポイント:不均等なとじられ具合。「一部分だけカリッとし ていると萌える」という領民(ファン)が多数いるらしい。
解説:卵とじかつ丼の出自は早稲田「三朝庵」説や大阪説など諸説あるが、いずれも1921(大正10)年頃と時期は一致している。その少し前、 蕎麦屋に親子丼などが導入されたことを考えると、〝卵とじ〟は大正以降の蕎麦屋でメニュー入りしたと考えるのが自然である。高度成長期以降、交通や情報インフラが整備され、〝卵 とじ〟が全国くまなく浸透した。「かつ丼」参勤交代である。
2.風林火(かつ)山!ソースかつ丼【福井ほか】
かつ丼のルーツは我にあり!
「かつ×ソース」という定番をそのまま丼に持ち込んだ。「これぞ国内最初のかつ丼!」との呼び声も高く、支持者は福井、長野を中心に山梨、群馬、福島 など各国に潜伏している。民衆が蜂起すれば、〝とじ〟優勢の勢力図も塗り変わる!?分類: かけ
特徴:味付けはソース
チャームポイント:ソース。むしろそれ以外の特徴はバラバラである。
解説:かつ丼界における最古の記録は、1913(大正2)年、早稲田の「ヨ ーロッパ軒」店主がソースかつ丼を考案したというもの。その10年後、 関東大震災が起き、店は郷里の福井に移転。当時の〝名物丼〟は、薄 切り一口かつにウスターソースの味つけだったという。 約100年後の現在では、「ソースかつ丼」自体は長野、山梨、埼玉、 群馬、福島などで確認されているが「一枚かつor薄切り一口かつ」「ウ スターソースorとんかつソース」「キャベツの有無」など要素の組み 合わせはバラバラ。このバリエーションこそ深い歴史の証左である。
3.越後の龍(しょうゆ)! タレかつ丼【新潟ほか】
くぐるのは醤油か、修羅場か
新潟のタレかつ丼は醤油ダレ。万能調味料の醤油を土台に、さっぱり味の城壁を築き上げた。一方、北海道・訓子府や福井にも同様に醤油を軸に味を組み立てた かつ丼はあるものの「かつの仕様や野菜の有無が異なる」とのウワサ。いずれの国にもそれぞれ一丼一城の主がいる趣。
- 分類:かけ
- 特徴:醤油ダレをまとった薄切り一口かつ
- チャームポイント:かつだけで勝負する潔さ。ご飯にかつを埋めた丼もあるなど、どことなく鰻丼を意識している様子。
- 解説:新潟は明治の開港五港の一つ。早くから洋食にも親しんでおり、 昭和の初頭、1930年代にはすでにタレかつ丼の原型が屋台で人気を博していた。その店こそ〝元祖〟といわれる「とんかつ太郎」である。とはいえ、甘辛い醤油ダレをかける丼は、他の地域にもある。東京では1918(大正7)、他に、北海道訓子府、群馬県下仁田にも類型が確認されている。その多くが地域オリジナル―つまり〝元祖〟である。
4.大味噌かつ魔王! 味噌かつ丼【愛知】
味噌は名古屋の誇り!
中京圏の魔性の味といえば、味噌かつ丼。豆味噌ダレの濃厚な味つけで、荒ぶる名古屋の豪の者。だが、代表店「叶」の半熟卵などは、最後に慈愛をにじませる。その圧倒的個性ゆえ他国への進出が難航する傾向があり、 孤高のかつ丼ともいえる存在。- 分類:かけ/煮
- 特徴:豆味噌を使った甘辛い味噌ダレ
- チャームポイント:ソースかつ丼に次ぐ多様性ぶり。キャベツのじゅ うたんを敷く店もあれば、仕上げに半熟卵をのせる店も
- 解説:とんかつ+濃厚な豆味噌ダレ=味噌かつの誕生は、1947(昭和 22)年説が有力。一方、味噌かつ「丼」は1949年に創業した店が元祖と言われている。現在では市販の味噌ダレを使う「家庭料理」として も幅を利かせる。「丼」の流儀は大きく2パターン。一つは箸休めに もなるキャベツをかつの下に敷いて清々しさを醸す。もう1パターン は、白飯の上に味噌ダレで煮たかつと半熟卵を直接のせ、濃厚さを楽しむ。どちらが好みか。店には添うてみよ、丼は食うてみよ。
5.デミグラスの乱 デミかつ丼【岡山】
「かつ丼」というとコレが出てきます
岡山という国は「ぼっけえ、うめえ(すごくおいしい)」味の宝庫。ご飯、キャベツ、かつにドミグラスソースをかけたデミかつ丼が隆盛を誇る。「そもそもドミグラスかデミグラスか問題」など細かな揺らぎを気 にすることなく、着々と足場を固めている。- 分類:かけ
- 特徴:ドミグラスソースをたっぷり!
- チャームポイント:仕上げのワンポイント。キャベツや生卵、グリー ンピースなど店ごとに個性を発揮? そもそもベースが茶色だし……。
- 解説:岡山人にとっては「普通のかつ丼」=デミかつ丼が当たり前。 1931(昭和6)年に創業した〝元祖〟店が考案し、地域に受け入れられた。その店での〝卵とじ〟の登場は1965(昭和40)年であり、今も単に 「かつ丼」を注文するとデミかつ丼が提供される土地柄だ。統一され た呼称としては〝デミかつ丼〟だが、元祖の店では創業以来一貫して 〝ドミグラスソースかつ丼〟と呼ばれ、他に〝洋風かつ丼〟と呼ぶ店も。 ソースの味わいもさまざま。みんな違って、みんないい。
6.美濃の蝮(とろみ)!あんかけかつ丼【岐阜】
卵を節約するためだった!?
東に日本アルプス、西に琵琶湖という日本の狭間に位置する岐阜の国には、比類なき美しさのかつ丼がある。メシの上にかつ、その上には、たっぷりのかき玉あんがかけられている。何物にも似ない佇まい。本当に稀有なものは地勢の隙間に息を潜める。- 分類:かけ
- 特徴:とろみのついた餡を上からとろーり
- チャームポイント:花びらのように美しいかき玉模様
- 解説:岐阜県の瑞浪市に見られるあんかけかつ丼。戦前から営業する食堂の初代店主が、当時貴重だった卵を節約しつつ、いかにボリュー ムを出すかを考え抜いた結論が〝あんかけ〟だったという。粘度を帯 びた餡ゆえに、かつの衣のサクサク感は失われず、しかも〝とじ〟のつゆだくのように白飯がつゆを吸い込みすぎることもない。倹約の知恵が意外な味わいの完成度をもたらした好例といえるのではないか。そしてこの地には別のタイプもある。タレかつの上に卵とじをのせ、 さらに生の卵黄をオンするという蠱惑的なかつ丼も。花より卵。
7.大琉球玉たま国! 沖縄かつ丼【沖縄】
かつ丼頼んだんですが…
独特の食文化で知られる沖縄のかつ丼は大量の野菜が盛られ、かつが見えない。卵ですら「とじ役」の任を与えられず、他の野菜とチャンプルー様に入り交じり、ただ具の一つに甘んじるのみ。丼のフタが閉まらないほどの具を盛るのも琉球仕様。- 分類:かけ
- 特徴:ほとんど野菜炒め丼に見える
- チャームポイント:チラ見えのかつ。時々恥ずかしげに顔をのぞかせたり、野菜の陰に隠れっぱなしだったりするところ
- 解説:沖縄の丼を初めて見る人はたいてい驚く。とにかくボリュームがすごいのだ。ご飯を山と盛り、その上におかずを山盛り。山の上に山。マウンテン・オン・マウンテンだ。 店によっては、かつも白飯も見えず、ただ丼にチャンプルーが山盛りにされた風情。丼は見かけによらぬもの。器量より気前、である。
一触即発、百花繚乱 、千客万来 ! そう、「かつ丼戦国時代 」 とは、さまざまな味に巡り逢える 「かつ丼天国時代 」だったのだ !
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今回の「全国7大カツ丼はこれだ!」は コチラから。
記事提供: dancyu