宮沢賢治記念館は生誕の地として有名な岩手県は中西部の花巻市にあります。ファンであれば一度は訪れたい場所として知っている方もいらっしゃると思いますが、関連の史跡が数多くあり彼の世界感にどっぷり浸かることが出来ますし、その独特の作風のルーツともいえる場所です。
昭和57年に開かれて以来、数多くの人たちが観覧に来ていますが、展示部分が30年以上の年月を経てリニューアルされています。まだ行ったことがない方にももちろんおすすめですが、久しぶりに新たな発見を探したい人もきっと満足できますので、文学にあまり興味がないと言う方もぜひ行ってみて下さい。平成28年は生誕120年を記念して特別展が開催されていますので、この機会もお見逃しなく。
5つのチェックポイント
【1】独特の芸術世界
宮沢賢治はそれまでに誰も思い付かなかった考えと方法によって、多くの作品を生み、多彩で独自な世界をつくりだしました。 詩約八百篇、童話約百篇、短歌約九百首、それに俳句、歌曲 、戯曲、短篇、絵画、教材用絵図、花壇設計などが「新校本宮澤賢治全集」に収められています。人生そのものを総合芸術として受けとめる感じ方には、オペラや同時代に展開してきた映画表現との深い共鳴もありました。宮沢賢治の独特の世界観は、彼の育った環境と天性の自然との交感力の高さにある、と言われています。裕福な質屋の家に生まれた賢治は、明治から昭和にかけて東北地方を襲った冷害による農民の困窮を間近に接し、また仏教の世界観にも強い影響を受けたとのことです。さらに、作品に擬声語を多様したり、韻文に近いリズム感をもった文体を用いたことも、大きな特徴と言えます。
【2】イーハトーブ
宮沢賢治は、「イーハトヴ」(イーハトーブ)を著者の心象中に、この様な状景をもって実在したドリームランドとしての日本岩手県であると説明しました。郷土岩手に基づいた創作を行い、作品中に登場する架空の理想郷に、岩手をモチーフとしたイーハトーブと名付けています。その不思議な楽しい国土から心象スケッチとしての詩や童話が生まれました。「イーハトーブ」は、宮沢賢治が作り出した造語で、岩手のかな読み「いはて」から転じたと言われています。宮沢賢治の著作の多くが彼の死後に本になったのですが、生きているうちに発行された唯一の童話集「注文の多い料理店」で使われたのが最初でした。
【3】展示品
http://www.city.hanamaki.iwate.jp/bunkasports/501/miyazawakenji/p004116.html
「宮沢賢治の心象世界」「宮沢賢治の作品世界」「宮沢賢治のフィールド」に分けて、賢治の愛用品、原稿など賢治ゆかりのものの展示やビデオやスライド、図書資料などが多数展示してあります。文章から宮沢賢治の心象世界を体験するのは大変ですが、この施設では、映像や音楽などで分かりやすく具体的に表現しています。また、宮沢賢治の有名な一節「雨ニモマケズ」は、彼が病床の中で小さなメモ帳に書いたものでしたが、その直筆のメモ帳をはじめ、宮沢賢治自筆の原稿や彼が愛用したものが展示されています。
【4】ポランの広場の花壇
http://www.kanko-hanamaki.ne.jp/sightseeing/ihatov/kenjikinenkan/
宮沢賢治が羅須地人協会時代の教え子の依頼で花巻温泉遊園地のために設計しましたが、経済的、技術的条件で実現されませんでした。当時の設計書と手紙をもとに再現した「南斜花壇」は、西城の唐草模様を取り入れ果実を小円形花壇に見たて、非対称にデザインされています。「日時計花壇」は文字盤の数字を花で描いた日時計を主にした異国風の模様花壇です。ポランの広場の花壇は、宮沢賢治記念館からその下の宮沢賢治イーハトーブ館に降りる遊歩道の途中にあります。「ポランの広場」とは、宮澤賢治の幻想豊かな童話のことで、誰もが元気で自分らしく楽しめる広場という意味だそうです。車で行ったら、国道456号線に面した宮沢賢治イーハトーブ館近くの駐車場からも登ると便利です。
【5】賢治サロン
賢治と花巻の年表を展示するほか、情報探索コーナーでは映像や音楽ライブラリーが観られます。情報探索コーナーには、画面をタッチして使用するパソコンとヘッドフォンが設置してあり、作品閲覧、童話の幻燈、全曲集を選択することができます。パソコンのあるスペースの隣りは喫茶コーナーになっており、資料を見終わった後、周囲の景色を見ながらゆっくりお茶を飲んだりすることもできます。
宮沢賢治記念館について
昭和57年(1982年)に、宮沢賢治ゆかりの地、花巻市胡四王山に開館した宮沢賢治記念館。2015年7月に32年ぶりに展示をリニューアルし、多彩なジャンルに及ぶ宮沢賢治の世界との出会いができる施設です。スクリーン映像や関係資料を5分野に分類し、解説と作品に至る創作過程、最新の研究成果などを展示紹介しています。
宮沢賢治記念館があるのは、花巻の市街地東側の丘陵地帯です。車で行く場合は、釜石自動車道・花巻空港インターチェンジで降りて、国道4号線から国道283号線を経由して国道456号線で約10分くらいです。近くには、同じ宮沢賢治をテーマにした宮沢賢治イーハトーブ館と宮沢賢治童話村、さらに花巻市博物館などがあり、それらは遊歩道などで繋がっています。
宮沢賢治記念館を訪れた方の声
宮沢賢治記念館! 宮澤賢治好きだ! pic.twitter.com/vv5Yhlj5W2
— かにご (@bytan_kanigoten) 2015, 9月 25
今日は坂(山)の下にあるイーハトーブ館から、庭園散策=坂を上って宮沢賢治記念館に行きましたので、下からの景色を順にご案内。1地図の現在地は2イーハトーブ館の上の駐車場。3なだらかな坂を上ります。4「山男の4月」から坂を見下ろした景色 pic.twitter.com/Qe221dJq8C
— TeruTeruZaてるてる座 (@TeruTeruZa) 2015, 9月 23
【宮沢賢治記念館】@新花巻。今年の春に展示がリニューアル。よりモダンでスタイリッシュに、でも温かみは継承され、賢治の作品の背景や世界観が伝わる素敵な展示空間に。視覚的な映像が増えました。宇宙コーナー、鉱物展示がオススメ!ぜひご来館を! pic.twitter.com/3QrJ2DGoRL
— TeruTeruZaてるてる座 (@TeruTeruZa) 2015, 9月 23
宮沢賢治記念館の展示内容は、2015年7月のリニューアルに伴い内容を一新しました。そのため、以前、訪れたことがある方でも、新たな発見や感動があると思います。また、車で行く場合は、国道456号線沿いの広い駐車場が利用できるイーハトーブ館から遊歩道や長い階段を登るのも楽しいと思います。
宮沢賢治記念館を観た後はここで休憩!
レストラン「Wildcat House 山猫軒」
賢治の童話注文の多い料理店をモチーフにしたレストラン。入り口では手作りの「山猫の料理長」が迎えてくれます。メニューには「イーハトーブ定食、わらしべ餅めぐり、でくのぼう(餅)、山猫すいとんセット、じゅんさいそば、鹿踊りそば」など花巻名物や賢治作品から命名した食べ物がたくさんあります。店内にはお土産として、宮沢賢治をモチーフにした関連商品やオリジナル商品がたくさんあります。
山猫軒は、宮沢賢治記念館の手前にあるレストランです。外観は童話に出てくるようなユニークな形ですが、店内は明るく落ち着いた雰囲気。ここでは、宮沢賢治が「イーハトーブ」とよんだ岩手の食材を使った料理を提供しています。さらに、新花巻駅の向かいには、銀河ステーションをイメージした系列のお店があります。こちらでも、地元の食材を使った料理と賢治グッズを用意しています。
■ 基本情報
- ・名称: Wildcat House 山猫軒
- ・住所: 岩手県花巻市矢沢3-161-33
- ・アクセス: 宮沢賢治記念館前
- ・営業時間: 9:00~17:00
- ・定休日:12月28日~翌1月1日休
- ・電話番号: 0198-31-2231
- ・料金: イーハトーブ定食1550円、山猫すいとんセット1200円、でくのぼう(餅)660円
- ・公式サイトURL: http://www.yamanekoken.jp/wildcat-house-%E5%B1%B1%E7%8C%AB%E8%BB%92/
合わせて読みたい記事
岩手県中部にある花巻市には花巻温泉郷があり、この温泉郷内にあるバラ園は宮沢賢治ゆかりの場所です。また、石川啄木の影響を受けた宮沢賢治は、盛岡からきれいに見える岩木山を題材にした短歌を作りました。さらに、盛岡の市街地にも宮沢賢治のモニュメントがいくつもあります。盛岡を訪れたら、ぜひ、探してみてください。
基本情報
■ 基本情報
- ・名称: 宮沢賢治記念館
- ・住所: 花巻市矢沢第1地割1−36
- ・電話: 0198-31-2319
- ・アクセス:【電車】新幹線新花巻駅より車で3分、東北本線花巻駅より車で15分
- 【車】花巻インターより車で20分、花巻南インターより車で20分
- ・開館時間: 8:30~17:00
- ・休館日: 12月28日~1月1日
- ・入館料: 大人350円 / 高大生250円 / 小中学生150円
- ・公式サイトURL:http://www.city.hanamaki.iwate.jp/bunkasports/501/miyazawakenji/p004116.html
宮沢賢治記念館は見所がたくさんありますね。教科書に出ていたのはほんの一部ですが、彼の作風に一度でも魅了されたことがある人なら、ぜひ行ってみたい場所だと思います。展示コーナーの様々な資料も興味深いですし、映像など分かりやすい工夫がされていますので、実はあんまり詳しく知らないという方でも、最後は感動してしまうかもしれません。また広場の花を楽しんだり、周辺を散策することもでき、すぐ近くにある「Wildcat House 山猫軒」は注文の多いレストランをモチーフにしていて、イーハトーブ定食などの名物や作品からのオリジナル商品などが沢山あるので、立ち寄ってみて下さい。